「テナントの家賃値上げは拒否できる?」
「理由と対応方法について知りたい。」
テナントの家賃値上げは、必ず受け入れなければならないものではありません。
借地借家法では、家賃の増額は貸主と借主の合意が前提とされており、正当な理由や根拠がなければ一方的な値上げは認められないケースがあるからです。
しかし、法律や相場を知らないまま対応すると、不利な条件を受け入れてしまうリスクもあります。
当記事では、テナント家賃値上げの基礎知識や法律上の考え方、値上げされる主な理由、具体的な対応方法や交渉のポイントを解説します。
テナントの家賃値上げに関する基礎知識

以下では、テナントの家賃値上げに関する基礎知識を解説します。
- テナントの家賃値上げは合意が前提になる
- 値上げリスクはテナント契約の種類によって異なる
- 値上げの通知は契約更新の2~3ヶ月前
- 家賃増額条項は契約書に記載されている
テナントの家賃値上げは、契約内容と手続きのルールを正しく理解することが重要です。
家賃は貸主の判断だけで自由に変更できるものではなく、契約形態や通知時期、契約書の記載内容によって対応方法が異なります。
まずは、基本的な仕組みを押さえることで、不要なトラブルや不利な判断を避けることが可能です。
以下では、テナントの家賃値上げに関する基礎知識について詳しく解説します。
テナントの家賃値上げは合意が前提になる
テナントの家賃値上げは、貸主と借主の合意がなければ成立しません。
事業用賃貸においても、家賃は契約条件の中核であり、貸主が一方的に金額を変更することは原則できないとされています。
合意が必要な理由は、借地借家法により借主の営業継続が保護されているためです。
貸主にある「賃料増額請求権」は、「正当な理由」がある場合に限られ、最終的には双方の合意が前提となります。
以下では、値上げ通知を受けた場合の整理表をまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 値上げ通知 | あくまで「お願い・協議の開始」 |
| 借主の対応 | 同意・交渉・拒否の選択が可能 |
| 合意がない場合 | 従来賃料の支払いが原則 |
| 強制力 | 貸主が一方的に決めることは不可 |
たとえば「来月から家賃を1万円上げます」と通知されても、借主が同意しなければ自動的に増額されることはありません。
値上げを求められた場合は、すぐに承諾せず、合意が前提であることを理解したうえで冷静に対応しましょう。
値上げリスクはテナント契約の種類によって異なる
テナントの家賃値上げリスクは、契約の種類によって異なります。
同じ物件であっても、契約形態の違いによって、値上げが起こりやすいタイミングや交渉余地が変わるため注意が必要です。
以下では、主なテナント契約の種類と値上げリスクをまとめました。
| 普通借家契約 | 更新が原則あり 値上げには正当な理由と合意が必要 値上げリスクは比較的低い |
|---|---|
| 定期借家契約 | 契約期間満了で終了 再契約時に条件変更されやすい 値上げリスクは高め |
テナント契約の種類によって値上げリスクが異なる理由は、契約ごとに「更新の有無」や「条件変更の自由度」が異なるためです。
特に定期借家契約は、契約期間満了時に条件を見直しやすく、値上げリスクが高くなる傾向があります。
普通借家契約では借主の保護が強く、貸主が一方的に条件変更を行うことは難しくなります。
契約時や更新前には必ず契約形態を確認し、将来的な値上げリスクを理解したうえで判断しましょう。
値上げの通知は契約更新の2~3ヶ月前
テナント家賃の値上げ通知は、契約更新の2~3ヶ月前に行われるケースが一般的となります。
契約更新の2~3ヶ月前に行われる理由は、事業用物件では家賃が経営に与える影響が大きく、即断を迫るとトラブルになりやすいためです。
貸主側も、円滑な合意形成を目的として、一定の猶予期間を設けるのが通例となっています。
以下では、値上げ通知時期の整理表をまとめました。
| 項目 | 一般的な内容 |
|---|---|
| 通知の目安 | 契約更新の2~3ヶ月前 |
| 目的 | 借主に検討・交渉の時間を与える |
| 注意点 | 契約書に別途期限が定められている場合あり |
| 借主の対応 | 内容確認・相場調査・交渉準備 |
たとえば、更新月の直前に突然値上げを告げられた場合は、十分な協議が行われていないとして交渉の余地が生まれます。
値上げ通知を受けたら、まずは通知時期が適切かを確認し、冷静に対応を進めることが大切です。
家賃増額条項は契約書に記載されている
テナントの家賃増額に関するルールは、契約書に記載されているのが一般的です。
値上げの可否や手続きは、契約時に取り決められた内容が判断基準となるため、まず契約書を確認する必要があります。
契約書に記載されやすい家賃増額条項の例は、以下の通りです。
- 経済事情や周辺相場が変動した場合は協議する
- 税金や維持管理費の増加時は賃料改定を検討する
- 更新時に賃料条件を見直す可能性がある
契約書に「協議のうえ改定する」と記載されている場合は、話し合いが前提であり、一方的な増額は認められません。
値上げ通知を受けた際は、まず契約書の該当条文を確認し、契約内容に沿った対応を行いましょう。
テナントの家賃値上げに関する法律

以下では、テナントの家賃値上げに関する法律を解説します。
- 家賃値上げは借地借家法で制限されている
- 借地借家法が定める賃料増額請求
テナントの家賃値上げは、借地借家法によって厳しく制限されています。
貸主は自由に家賃を上げられるわけではなく、法律で定められた条件を満たしたうえで、借主との合意を得る必要があります。
値上げ通知を受けた際は「法律上認められるケースかどうか」を確認しましょう。
家賃値上げは借地借家法で制限されている
テナントの家賃値上げは、借地借家法によって制限されています。
制限されているため、貸主の判断だけで自由に家賃を引き上げることはできず、法的な枠組みの中で慎重に判断されます。
借地借家法による制限のポイントは、以下の通りです。
- 家賃が「不相当」といえる場合のみ増額請求が可能
- 値上げには客観的な事情の変化が必要
- 借主の合意または法的手続きが前提
- 一方的な通知だけでは効力が生じない
借地借家法では、借主の立場を保護し、賃貸借関係の安定を図る目的で、家賃増額に制限を設けています。
たとえば、景気変動や相場変化がほとんどない状況での値上げ要求は、法律の趣旨から見ても認められにくいといえます。
家賃値上げを求められた場合は「法律上、制限がある行為である」ことを理解したうえで内容を確認し、適切に対応しましょう。
借地借家法が定める賃料増額請求
借地借家法の賃料増額請求は「請求できる権利」を定めたものであり、値上げが自動的に成立する制度ではありません。
貸主は一定の条件下で増額を求めることが可能で、最終的な賃料は協議や法的判断によって決まります。
借地借家法32条では、賃料が現在の経済状況に照らして不相当となった場合、貸主・借主のいずれからも賃料改定を求めることができるとされているからです。
以下では、賃料増額請求の主な流れをまとめました。
- 貸主が増額請求の意思表示を行う
- 双方で理由や根拠資料をもとに協議
- 合意に至らない場合は調停・裁判で判断
貸主から「相場が上がったので増額したい」と請求があった場合でも、借主は内容を精査し、納得できなければ交渉や拒否を選択できます。
賃料増額請求は、あくまで話し合いの入口であることを理解し、根拠を確認しながら冷静に対応しましょう。
テナントの家賃が値上げされる理由

以下では、テナントの家賃が値上げされる理由について解説します。
- 周辺相場と比べて賃料が低くなっている
- 固定資産税や維持管理費が増加している
- 経済情勢や不動産市場が変動している
テナントの家賃が値上げされる理由は、個別事情ではなく複数の外部要因が重なっているケースが一般的です。
貸主は感覚的に家賃を上げているわけではなく、相場・コスト・市場環境といった要素を根拠に判断しています。
家賃値上げを求められた際は、どの理由が該当しているのかを切り分けて確認し、妥当性を見極めましょう。
周辺相場と比べて賃料が低くなっている
周辺相場と比べて賃料が低くなっている場合は、家賃値上げの理由として挙げられやすくなります。
貸主は、物件価値を市場水準に近づけたいと考えており、長期間家賃を据え置くと市場価格との差が広がるからです。
特に再開発や企業進出が進むエリアでは、短期間で相場が上昇することもあります。
値上げ判断に使われやすい相場比較の例は、以下の通りです。
- 同一エリア・同規模のテナント物件
- 同じ築年数・設備条件の物件
- 直近で成約した賃料水準
たとえば、近隣の同条件物件が月額10万円前後で成約している中、自社だけが8万円の場合は、相場是正を理由に値上げが検討されることがあります。
テナントの家賃値上げ通知が届いた場合は、提示された相場データを確認し、冷静に妥当性を判断することが重要です。
固定資産税や維持管理費が増加している
固定資産税や維持管理費の増加は、家賃値上げの理由として挙げられる代表的な要因のひとつになります。
固定資産税や修繕費、管理費は貸主が継続的に負担する費用であり、これらが増加すると賃貸経営の収益性が低下するからです。
特に築年数が進んだ建物では、設備更新や大規模修繕の頻度が高まり、負担が増えやすくなります。
値上げ理由として挙げられやすい費用の例は、以下の通りです。
- 固定資産税・都市計画税の見直し
- 外壁や屋上などの大規模修繕費
- 設備(空調・給排水)の更新費用
- 共用部の管理・清掃費の上昇
家賃の値上げ理由として「修繕費がかかるため値上げしたい」と言われた場合でも、具体的な工事内容や金額が示されなければ妥当性は判断できません。
家賃の値上げを通知された場合は、提示された資料を確認し、実際の負担増と家賃値上げの関係を冷静に見極めましょう。
経済情勢や不動産市場が変動している
経済情勢や不動産市場の変動は、テナント家賃が見直される要因のひとつです。
景気動向や地価の変化によって、物件の価値や需要が変わると、賃料条件の再検討が行われることがあります。
家賃見直しにつながりやすい市場変化の例は、以下の通りです。
- 物価上昇によるインフレの進行
- 地価や不動産価格の上昇
- 再開発や企業進出による需要増
- 空室率の低下による貸し手市場化
不動産は市場の需給バランスに左右される資産のため、需要が高まると賃料水準も上昇しやすくなります。
特に、インフレの進行や金利動向、エリアの再開発などは、賃料相場に直接的な影響を与えることがひとつの理由です。
テナントの家賃値上げの対応方法

以下では、テナントの家賃値上げの対応方法について解説します。
- 値上げ理由の根拠資料を確認する
- 周辺のテナント家賃相場を調べる
- 家賃値上げへの返答に使える例文を活用する
テナントの家賃値上げを求められた場合は、感情的に反応せず、事実と根拠を整理したうえで対応することが重要です。
値上げに応じるか、交渉するかを判断するためには、理由の裏付け確認・相場調査・適切な返答という3つのステップを踏むことで、冷静かつ有利に話し合いを進めやすくなります。
テナントの家賃値上げの対応方法は、以下で解説する内容を参考にしてみてください。
値上げ理由の根拠資料を確認する
家賃値上げに対応する際は、まず値上げ理由の根拠資料を確認することが重要です。
理由が明確でなければ、値上げの妥当性を判断できず、不利な条件を受け入れてしまう可能性があります。
確認すべき主な根拠資料の例は、以下の通りです。
- 周辺エリアのテナント賃料相場資料
- 固定資産税・都市計画税の増額通知
- 修繕工事や設備更新の見積書
- 不動産鑑定意見書などの第三者資料
たとえば「相場が上がっている」と言われても、具体的なデータがなければ判断できません。
値上げを受け入れる前は必ず資料の提示を求め、根拠が妥当かを冷静に確認しましょう。
周辺のテナント家賃相場を調べる
家賃値上げに対応するうえでは、周辺のテナント家賃相場を把握することが欠かせません。
相場を知らなければ、提示された値上げ額が妥当かどうか判断できず、交渉材料も不足してしまうからです。
以下では、相場を調べる主な方法をまとめました。
- 不動産ポータルサイトで近隣物件を検索
- 不動産会社に成約事例を確認
- 同エリアの空室募集条件を比較
たとえば、貸主が提示した値上げ後の家賃が同条件の近隣物件よりも高い場合は、交渉余地が十分にあります。
相場を客観的に把握したうえで、根拠をもとに冷静な交渉を進めましょう。
家賃値上げへの返答に使える例文を活用する
家賃値上げへの返答は、感情を抑えた定型的な例文を活用することで、交渉を有利に進めやすくなります。
口頭でのやり取りは誤解や感情的対立を招きやすいため、書面やメールで冷静に意思表示することが重要です。
以下では、家賃値上げへの返答例文をまとめました。
| 状況 | 例文 |
|---|---|
| 内容確認 | 「ご連絡ありがとうございます。ご提示いただいた条件について、現在内容を確認しております。」 |
| 交渉希望 | 「周辺相場や契約内容を踏まえ、条件について改めてご相談させていただければと存じます。」 |
| 一時保留 | 「社内検討のため、回答まで少々お時間をいただけますでしょうか。」 |
家賃値上げへの返答は、感情的に拒否してしまうと交渉が長期化する可能性があります。
例文を活用し、冷静で丁寧な返答を心がけましょう。
オーナーとの家賃交渉は、
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条件整理から交渉の進め方まで、
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テナントの家賃値上げを回避する方法

以下では、テナントの家賃値上げを回避する方法を解説します。
- 契約更新時に条件を明確にしておく
- オーナーにとっての代替案を提示する
- 長期入居や安定経営を理由に交渉する
テナントの家賃値上げは、通知を受けてから対応するだけでなく、事前の準備や交渉の工夫によって回避できる可能性があります。
契約更新時の条件整理や、オーナー側のメリットを意識した提案を行うことで、値上げを防いだり、影響を最小限に抑えられるケースも少なくありません。
テナントの家賃値上げを回避する方法は、以下で解説する内容を参考にしてみてください。
契約更新時に条件を明確にしておく
家賃値上げを回避するためには、契約更新時に条件を明確にしておくことが重要です。
更新時の取り決めが曖昧なままだと、後から家賃改定を求められるリスクが高まります。
更新時に明確にしておきたい主な条件は、以下の通りです。
| 確認項目 | 明確にすべき内容 |
|---|---|
| 改定条件 | どのような場合に見直すか |
| 協議方法 | 書面協議・期限の有無 |
| 期間 | 据え置き期間の設定 |
| 特約 | 借主に不利な条項がないか |
たとえば「経済状況に応じて協議する」といった表現だけでは、判断基準が不明確です。
更新時には具体的な条件を確認・整理し、後の値上げリスクを抑える契約内容にしておきましょう。
オーナーにとっての代替案を提示する
家賃値上げを回避・抑制するためには、オーナーにとってメリットのある代替案を提示することが有効です。
単に値上げを拒否するよりも、双方にとって納得感のある着地点を探ることで、交渉がまとまりやすくなります。
以下では、オーナーにとって有効な代替案の例をまとめました。
- 契約期間を延長し、長期入居を約束する
- 原状回復条件や修繕負担の調整を提案する
- 支払い条件(支払期日・方法)の柔軟化
代替案として「家賃は据え置く代わりに契約期間を延ばす」といった提案は、オーナーにとって安定収入につながります。
値上げ交渉では、オーナーの視点を踏まえた代替案を用意し、建設的な話し合いを進めましょう。
長期入居や安定経営を理由に交渉する
長期入居の実績や安定した経営状況は、家賃値上げを抑えるための有効な交渉材料になります。
テナントの入れ替わりには、空室期間や募集コストが発生し、オーナーにとって大きなリスクとなるからです。
以下では、交渉時にアピールできるポイントをまとめました。
- 長期間にわたり家賃の滞納がない
- 事業が安定して継続している
- 物件を丁寧に使用している
長年同じ条件で入居し、家賃滞納やトラブルがない場合は、値上げを見送ってもらえるケースもあります。
交渉の際は、長期入居と安定性がもたらすメリットを具体的に伝え、冷静に話し合いましょう。
テナントの値上げ交渉が続いた場合の対応方法

以下では、テナントの値上げ交渉が続いた場合の対応方法について解説します。
- 値上げを拒否しながら家賃を支払い続ける
- 折衷案として段階的な増額を提案する
- 専門家や不動産会社に相談する
テナントの家賃値上げ交渉が長引いた場合は、感情的に判断せず、法的リスクを避けながら次の選択肢を整理することが重要です。
交渉がまとまらない状況でも、対応を誤らなければ不利な立場に陥るとは限りません。
支払いの継続、折衷案の提示、第三者への相談という段階的な対応が現実的な解決につながります。
テナントの値上げ交渉が続いた場合は、以下で解説する対応方法を参考にしてみてください。
値上げを拒否しながら家賃を支払い続ける
家賃値上げに同意できない場合でも、従来の家賃は支払い続けることが重要になります。
家賃の滞納が発生すると、値上げの妥当性とは無関係に契約違反と判断される可能性があるからです。
交渉中であっても、旧賃料を支払い続けていれば、借主としての義務を果たしていることになります。
以下では、家賃値上げを拒否しながら支払う際のポイントをまとめました。
- 値上げには同意していない意思表示を明確にする
- 支払いは従来どおりの金額で行う
- 書面やメールでやり取りを残す
家賃値上げの通知を受けた後は、何も伝えずに旧賃料を支払っていると、暗黙の同意と誤解される可能性があります。
支払いは、値上げに同意していない旨を伝えたうえで続けることが重要です。
折衷案として段階的な増額を提案する
家賃値上げに全面的に同意できない場合は、段階的な増額を折衷案として提案することが有効です。
中間的な案の提示は、一度に大きな負担増を受け入れる必要がなく、オーナー側にも将来的な収益改善を示せます。
段階的増額の提案例は、以下の通りです。
| 提案パターン | 内容 | メリット |
|---|---|---|
| 据え置き後増額 | 初年度0円、翌年以降増額 | 事業負担の平準化 |
| 分割増額 | 2〜3年で段階的に反映 | 合意しやすい |
| 条件付き見直し | 市況等で再協議 | 柔軟な運用 |
「来期は据え置き、再来期に半額分を反映」といった提案は、現実的な落としどころになりやすいです。
交渉では具体的なスケジュールと条件を示し、双方にとって納得感のある段階的増額を提案しましょう。
専門家や不動産会社に相談する
家賃値上げ交渉が難航した場合は、専門家や不動産会社に相談することが有効です。
当事者同士では感情や立場の違いから話が進まないケースでも、第三者が入ることで状況が整理され、現実的な解決に近づくことがあります。
以下では、相談先ごとの役割をまとめました。
- 不動産会社:周辺相場の把握、条件交渉の仲介
- 弁護士:法的妥当性の判断、調停・訴訟対応
- 不動産コンサルタント:収支や事業継続を踏まえた助言
不動産会社を通じた相場資料の提示は、オーナーが冷静に再検討するケースもあります。
交渉が行き詰まった場合は無理に抱え込まず、早めに専門家へ相談し、リスクを抑えた解決を目指しましょう。
家賃値上げが妥当かどうかの判断は、
オフィスバンクへご相談ください。
相場や契約内容を踏まえ、
第三者視点でアドバイスいたします。
テナントの家賃値上げに関するよくある質問
以下では、テナントの家賃値上げに関するよくある質問をまとめました。
- テナントの家賃値上げは拒否できますか?
- テナントの家賃値上げ幅の相場は?
- 家賃値上げの通知を無視するリスクは?
- 家賃値上げに関する判例はありますか?
テナントの家賃値上げについては「拒否できるのか」「相場はどの程度か」「無視しても問題ないのか」など、実務上の疑問を抱く方が多くいます。
上記の疑問は、対応を誤ると不利な立場に立たされる可能性があるため、基本的な考え方を事前に理解しておくことが重要です。
家賃値上げに関する疑問は放置せず、ひとつずつ解消しておきましょう。
テナントの家賃値上げは拒否できますか?
テナントの家賃値上げは借主の合意がなければ拒否できます。
家賃は賃貸借契約の重要条件であり、貸主が一方的に変更することは原則できないからです。
以下では、家賃値上げを拒否できるケースをまとめました。
- 値上げ理由が曖昧・抽象的な場合
- 周辺相場と大きな差がない場合
- 契約書に増額条件が明確に定められていない場合
値上げ理由として「経営が厳しいから」という内容だけでは、正当な増額理由として認められにくい傾向があります。
値上げ通知を受けた場合は、すぐに結論を出さず、合意が前提であることを理解したうえで冷静に対応しましょう。
テナントの家賃値上げ幅の相場は?
テナント家賃の値上げ幅の相場は「数%〜10%未満程度」に収まるケースがほとんどです。
大幅な値上げが必ずしも認められるわけではなく、相場や根拠とのバランスが重視されます。
一般的な値上げ幅の目安は、以下の通りです。
- 3〜5%前後:相場調整として比較的多い
- 5〜10%未満:相場乖離やコスト増が明確な場合
- 10%以上:正当性の説明が強く求められる
月額10万円の家賃であれば、5%は5,000円、10%は1万円に相当します。
提示された値上げ幅が相場を超えている場合は、周辺相場や根拠資料を確認したうえで、冷静に交渉しましょう。
家賃値上げの通知を無視するリスクは?
家賃値上げの通知を無視することはおすすめできません。
通知を無視した場合は、貸主との意思疎通が取れなくなり、交渉の機会を失ってしまうからです。
以下では、通知を無視した場合に起こり得るリスクをまとめました。
| リスク内容 | 想定される影響 |
|---|---|
| 返答なし | 意思表示が伝わらない |
| 交渉放棄 | 条件調整の機会喪失 |
| 関係悪化 | 今後の対応が硬化 |
返答せずに旧賃料を支払い続けているだけでは、値上げに同意していない意思が明確にならない場合があります。
値上げに応じない場合でも、検討中や協議希望の意思を伝え、冷静に対応しましょう。
家賃値上げに関する判例はありますか?
テナントの家賃値上げに関しては、借地借家法32条を基準に判断した判例が多数存在します。
判例でよく検討される主な要素は、以下の通りです。
| 判例の傾向 | 判断されやすいポイント |
|---|---|
| 値上げが認められた例 | 相場乖離が大きく、資料が十分 |
| 否定された例 | 根拠不足・差が小さい |
| 増額幅 | 請求額より抑えられる傾向 |
| 判断基準 | 客観性・合理性を重視 |
貸主が大幅な値上げを請求しても、裁判では相場との差を考慮し、一部のみ増額が認められるケースも少なくありません。
判例から分かるのは、「請求すれば通る」「拒否すれば必ず守られる」という単純な話ではないという点です。
家賃値上げを求められた場合は、判例の考え方を踏まえ、根拠と資料をもとに冷静に対応しましょう。
テナントの家賃値上げを求められたら妥当かどうかを判断しよう
テナントの家賃値上げを求められた場合、重要なのは感情的に判断せず、内容が妥当かどうかを整理して見極めることです。
家賃値上げは必ずしも受け入れる義務があるものではなく、法律・契約・相場といった客観的な基準に照らして判断する必要があります。
以下では、妥当性を判断するための基本チェックポイントをまとめました。
- 値上げは借主の合意が前提になっているか
- 借地借家法に照らして正当な理由が示されているか
- 周辺のテナント家賃相場と比べて大きな乖離がないか
- 値上げ幅が相場(数%〜10%未満程度)に収まっているか
- 根拠資料(相場データ・税額・修繕費など)が提示されているか
根拠が曖昧で相場とも大きな差がない場合は、据え置きや条件見直しを交渉できる余地があります。
客観的資料が揃っていて妥当性が高い場合は、段階的な増額など現実的な折衷案を検討するのもひとつの選択肢です。
家賃値上げの通知は、妥当性を一つずつ確認し、自社の経営や将来を見据えた最適な判断を行いましょう。
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