「テナントとは?」
「テナントと店舗の違いは?」
テナントとは、事業目的で不動産物件を借りる際に使われる言葉で、店舗・事務所・倉庫など建物の一部または全部を借りて使う入居者を指します。
本記事では、「テナント」にまつわる言葉の意味や、業種別のテナントの特徴や選び方を紹介します。
さらに、テナント契約の際に知っておくべき法律・税務の基礎知識をお伝えしますので、テナント選びに役立つ情報が満載です。
不動産を選ぶ際には、「どの種類のテナント物件が自分の業種に合っているか」を見極めることが大切です。
物件の立地や構造だけでなく、契約条件や維持管理の内容も踏まえて、納得のいくテナント選びを行いましょう。
「テナント」とは建物を事業目的で借りる入居者のこと

「テナント」とは、ビルや商業施設、オフィスビルなどの建物の一部を借りて使用する店舗や企業、個人事業主のことを指します。
一般的には、建物の所有者(オーナー)が貸主となり、借り手であるテナントは賃料を支払ってスペースを使用します。
たとえば、ショッピングモール内に入っているアパレルショップや飲食店、美容院などがテナントにあたるでしょう。
また、オフィスビル内に入っている企業の事務所や、サービス業の店舗なども広い意味でテナントと呼ばれます。
また、IT分野における「テナント」とは、システムやサービス内での利用範囲や独立した環境を指します。
「テナント募集」とは事業用の借り主を募集すること
「テナント募集」とは、オフィスビルや商業施設などの空き物件に、事業目的で入居してくれる借り主(テナント)を募集することを指します。
居住用ではなく事業用賃貸物件が対象となるため、入居者には会社や店舗運営者、クリニック経営者など、事業者が想定されています。
テナント募集に掲示されている主な項目は以下の通りです。
項目 | 内容の例 |
---|---|
面積・坪数 | 100㎡(約30坪)など |
賃料 | 月額30万円(坪単価1万円)など |
共益費 | 月額2万円など |
敷金・保証金 | 敷金3ヶ月分、保証金6ヶ月分など |
契約期間 | 2年契約・更新可など |
引き渡し状態 | スケルトン・居抜き・一部内装付き など |
使用用途の制限 | 飲食不可、医療系歓迎など |
募集開始日 | 2025年5月~ 即入居可など |
「テナント募集」は単に空室を埋めるだけでなく、物件の用途や立地に合った事業者を見つけることが目的となっています。
ターゲットに合う業種を想定したうえで募集を行うことが、物件の価値を高め、長期的な安定収入にもつながります。
「テナントは」日本語で「店子」という
「テナントは」日本語で「店子(たなこ)」といいます。
古くから使われている言葉で、江戸時代には商人が借りた店のことを「店子」と呼んでいました。
現代では、同じ意味を持つ外来語「テナント」が一般的に使われていますが、「店子」という言葉も契約書や法律文書、あるいは不動産関連の専門用語としていまなお登場することがあります。
「店子」と「テナント」は意味に違いはありませんが、使用される場面や印象には差があります。
「店子」はやや古風で伝統的な響きを持ち、日本的な文脈に合う言葉です。
一方で、「テナント」は現代的でビジネス寄りの言い回しとして広く使われています。
不動産や店舗運営に関する会話や文章では、文脈に応じて使い分けることで、より自然な表現になります。
テナントと店舗の違いは?
「テナント」は不動産契約上の“借り手”や“貸し区画”を指すのに対し、「店舗」は商品やサービスを販売・提供する“営業の場”を意味します。
つまり、「テナント」は物件の賃貸借に関する概念であり、「店舗」は営業やビジネスの現場を表す言葉です。
以下の表で、それぞれの意味や使われ方の違いを詳しく比較してみましょう。
項目 | 意味 | 対象 | 用途 |
---|---|---|---|
テナント | 賃貸物件の借り手、または借りられている区画 | オフィス、飲食店、物販店、医療施設など | 賃貸契約に基づく入居全般 |
店舗 | 商品やサービスを販売するための施設や店 | 主に小売・サービス業などの販売用スペース | 実際に営業活動を行うための場所 |
上記のように、「テナント」は主に契約や不動産管理の立場から使われ、「店舗」は営業活動やお客様に向けた実際の現場として扱われます。
両者を混同せずに正しく理解しておくことは、ビジネスや不動産関連のコミュニケーションにおいて重要です。
テナントとオフィスの違いは?
テナントは「貸借人を募集している不動産」を指し、オフィスは「利用目的」を指します。
両者は比較するものではなく、テナントをオフィスとして使用することも可能です。
ただし、不動産によって「飲食不可」、つまり飲食店としての使用は禁止といった条件が設けられているケースがあるため、使用方法についてオーナーによく確認しなければならないという点には注意が必要です。
テナントのオーナーによっては、区画の利用目的を決めている場合もあるので、オフィスとして使用したい場合は事前に伝えておきましょう。
形態別に見る!テナントの特徴と選び方

業種形態別に、テナントの選び方と特徴を解説します。
賃貸物件、シェアオフィス、商業施設の一角など、テナントの形態によってコストや契約条件、集客力、運営の自由度は大きく異なります。
業種別に選び方のポイントを紹介しますので、参考にしてください。
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【テナント形態】飲食店
飲食店向けのテナントは、他業種と比べて常に高い需要があります。
特に駅近や繁華街などの立地は競争率が高く、条件の良い物件はすぐに埋まってしまうことも少なくありません。
飲食店は集客力や回転率が売上に直結するため、テナント選びは成功を左右する重要な要素です。
物件を選ぶ際には、立地や家賃だけでなく、ダクトや排水設備、電気容量などのインフラ面、さらには臭いや音に対する近隣との兼ね合いも慎重に確認する必要があります。
- 想定する客層が集まる地域
- 害獣や害虫の被害歴
- 人目につきやすい立地
【テナント形態】コンビニ
コンビニのテナントは、24時間営業が基本となる業態のため、立地や動線、視認性といった要素が重視されます。
特に、幹線道路沿いや住宅街の入り口、オフィス街の一角など、日常的に人が行き交う場所は好まれやすく、物件探しはタイミングがすべてということも多いです。
物件の条件としては、ある程度の間口が取れること、駐車場の確保が可能であること、そして搬入・廃棄動線が確保しやすいかどうかがポイントです。
また、コンビニ用のテナントは居抜きでの出店もほとんどなく、スケルトンからの新規開業が中心です。
初期投資はかかりますが、うまく立地をつかめば長期運営につながる可能性は高い業態です。
- 人の出入りが多い場所
- 車の交通量が多い場所
- 近隣に競合店が多すぎない
【テナント形態】美容院
美容院のテナントを探す際は、立地の良さと同じくらい「設備の整いやすさ」が重要になってきます。
水回りの位置や数、給湯設備、電気容量など、美容業特有のインフラ条件を満たす必要があるため、スケルトンよりも美容系の居抜き物件が見つかると理想的です。
また、店内のレイアウトや内装の自由度も意識したいポイントです。
セット面の配置、シャンプーブースの動線、個室の有無など、空間の使い方が集客やリピーターの定着に影響します。
駅近の路面店は集客力がある反面、賃料が高めになるため、ターゲット層やサービス単価に見合うかの見極めも必要です。
- 駅近や商店街沿いなどの通いやすい立地
- 給排水設備・電気容量が美容機器の使用に適している
- 内装の自由度
【テナント形態】オフィス・事務所
オフィスや事務所向けのテナントは、業種や働き方のスタイルによって求められる条件が大きく変わります。
一般的には、交通アクセスの良さや建物の管理体制、セキュリティの有無が重視されます。
特に来客の多い業種であれば、エントランスの印象や共用部の清潔感も見逃せないポイントです。
最近では、フリーアドレスやリモートワークを取り入れる企業も増えており、固定席を前提としない柔軟なレイアウトが可能な物件のニーズも高まっています。
また、最初から内装や什器が整った「サービスオフィス」や「シェアオフィス」も選択肢のひとつです。
- 駅からの距離やバス便などの交通アクセス
- 通信インフラ(高速インターネットや電話回線)の整備状況
- 使いやすい間取りと空調・照明などの設備環境
【テナント形態】工場
製造業や加工業を行う企業にとって、工場用テナントは生産効率や安全性に直結するため、慎重な選定が必要です。
特に都市近郊や物流拠点にアクセスしやすい地域では需要が高く、立地条件の良い物件はすぐに埋まってしまうケースも多く見られます。
工場の運営には、設備の設置スペースや天井の高さ、搬入出のしやすさなど、特殊な要件が求められます。
また、工場の種類や製造内容によっては、騒音や振動、排気などの問題から近隣環境への配慮も不可欠です。
- 必要な電力容量や床荷重に対応している
- 大型車両が出入りしやすい導線・搬入スペースがある
- 用途地域の規制(工業地域、準工業地域など)に適合している
【テナント形態】物販店
物販店向けのテナントは、取り扱う商品や想定する顧客層によって、最適な立地や広さ、設備が大きく変わってきます。
駅からのアクセスや通行量の多さはもちろん、周辺にどのような店舗が並んでいるかも売上に影響を与える要素のひとつです。
特に同業種が集まるエリアでは、比較されやすい反面、集客力の相乗効果も期待できます。
また、物販店では商品の見せ方や導線も重要なため、間口の広さや天井の高さ、自然光の入り具合など、内装の自由度にも目を向けたいところです。
- 店舗前の人通りや視認性は十分か
- 近隣に似た業態の店があるか(競合または集客メリット)
- 在庫や什器を保管できるスペースが確保できるか
【テナント形態】学習塾
学習塾向けのテナントは、駅近や住宅街の中など「通いやすさ」を重視した立地が選ばれる傾向にあります。
特に小・中学生を対象とする場合は、保護者の送迎や通学路の安全性も大切なポイントになります。
また、周囲に騒音の出やすい施設があると集中力の妨げになるため、学習塾では「静かな環境」が重要です。
室内のレイアウトについては、個別指導か集団指導かによって必要な広さや間取りが変わってきます。
廊下や待合スペース、保護者との面談スペースなども想定しておきたいところです。
- 駅や学校、住宅街からのアクセスが良好
- 騒音や雑音の少ない静かな環境
- 学年や指導スタイルに合った教室レイアウトが確保できるか
【テナント形態】倉庫
倉庫向けのテナントは、保管するモノの種類や運用方法によって求められる条件が大きく変わってきます。
立地に関しては、高速道路のインターチェンジや主要幹線道路へのアクセスの良さが重視されます。
また、倉庫内の天井高や床荷重、シャッターの高さ・幅など、物理的なスペックも非常に重要です。
フォークリフトを使用する場合は、床の耐久性や通路の幅も確認しておきたいところです。
さらには、防犯面やセキュリティ設備の有無、湿度や気温の管理が必要な場合の空調設備の対応力なども、扱う商品によっては重要な選定ポイントになります。
- 荷物の出し入れに適したアクセス性(幹線道路やICからの距離)
- 搬入出に対応できるシャッターや搬入口のサイズ
- 保管物に応じた天井高・床荷重・空調環境などのスペック
【テナント契約の落とし穴】知っておくべき法律・税務の基礎知識と対策

テナントを契約する際に、知っておくべき法律・税務の基礎知識を紹介します。
- 賃貸借契約で見落としがちな条項
- テナント契約に関わる税金の基礎知識
- 借地借家法が適用されるか
実は、契約書に記載された法律面の取り決めや、見落としがちな税務上の扱いこそ、後々大きなリスクや負担につながる可能性があります。
テナント契約において特に注意すべき法律・税務の基礎知識と、具体的な対策についてわかりやすく解説します。
賃貸借契約で見落としがちな条項
テナント契約では、賃貸借契約で見落としがちな条項に注意が必要です。
表面的な条件だけで契約を進めてしまうと、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
特に「原状回復」や「中途解約」に関する条項は、契約書に細かく記載されているにもかかわらず、しっかり読み込まれていないケースが多く見受けられます。
以下に、特に注意したい条項とポイントを表にまとめました。
注意したい条項 | 内容と注意点 |
---|---|
原状回復の範囲 | 契約によっては壁紙・床材の全面撤去や設備撤去を求められる場合がある。工事範囲や費用負担を明確にしておくことが重要。 |
中途解約条項 | 解約予告期間や違約金の有無に加え、解約不可期間(最低契約期間)が定められているケースもある。 |
特約事項 | 貸主が独自に設けているルール(例:看板の設置制限、深夜営業の禁止など)は見落としやすい。 |
契約書をしっかりと精査し、不明点は契約前に確認しておくことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
とくに特約事項や例外規定は見逃しがちなので、要チェックです。
テナント契約に関わる税金の基礎知識
テナント契約に関わる際、家賃や契約金ばかりに目が行きがちですが、実は税金との関係も重要です。
特に「消費税」と「固定資産税」は、契約条件によってテナント側の負担が大きく変わることがあります。
以下の表で、テナント契約時に関係する主な税金の扱いを整理してみましょう。
税金の種類 | 概要 | テナント側への影響 | 注意点 |
---|---|---|---|
消費税 | 事業用テナントの賃料には原則として消費税が課税される(住宅は非課税) | 月々の賃料に加えて消費税分を支払う必要がある | 契約時に「税込」か「税抜」かを必ず確認し、更新時の増額にも注意する |
固定資産税 | 建物や土地の所有者に課税される | 原則として貸主が支払うが、契約によってはテナントに転嫁されるケースもある | 賃貸契約書の中で「負担割合」の条項を確認し、必要なら交渉する |
消費税は年間契約の場合、課税額も大きくなるため、経費計上の観点からも事前に計算しておきます。
また、固定資産税については、テナント側が一部または全額を負担するという条件がこっそり契約書に含まれていることもあり、見落としやすいポイントです。
特に長期契約の場合は、将来の税制改正の影響も踏まえて、柔軟な契約条件を整えておくことが望ましいでしょう。
借地借家法が適用されるか
テナント契約では、「借地借家法」がどこまで適用されるかが大きなポイントになります。
特に事業用物件の契約においては、一般住宅とは異なり、契約形態によって借主の権利が大きく異なることに注意が必要です。
事業用のテナント契約でよく使われるのが「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類です。
違いを理解せずに契約を結ぶと、契約終了時に想定外の立ち退きや再契約の困難に直面するリスクがあります。
以下の表で「普通借家契約」と「定期借家契約」の違いを整理しましょう。
契約の種類 | 契約期間 | 契約満了時の扱い | 更新の有無 | 借地借家法の適用 |
---|---|---|---|---|
普通借家契約 | 原則として1年以上 | 借主の希望があれば原則継続 | 自動更新あり(貸主からの更新拒絶には正当事由が必要) | 適用される |
定期借家契約 (事業用) | 期間の定めあり | 原則として再契約が必要(再契約は貸主の自由) | 自動更新なし | 一部適用 |
「定期借家契約」は、契約満了後に貸主の意思で契約終了となるため、借主にとっては継続使用の保障がありません。
長期的に営業を続けたいと考えている場合は「普通借家契約」を希望する方が安心です。
ただし、立地条件の良い物件では定期借家契約を条件に出されることもあり、内容をよく吟味したうえで判断する必要があります。
参考:定期借家制度|国土交通省
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テナントとは何かを理解し物件探しをしよう
テナントとは、事業目的で建物の一部や全部を借りる入居者のことを指し、店舗やオフィス、倉庫などさまざまな形態があります。
それぞれのテナント形態には異なる特徴があり、目的に合った物件を選ぶことが事業成功の第一歩です。
また、契約時には法律や税務の知識も欠かせません。
本記事で紹介した基礎知識をもとに、テナントの意味を正しく理解し、自分の事業に最適な物件探しと契約準備を進めましょう。