「オフィス移転の費用はいくらかかる?」
「内訳や費用を抑えるコツを知りたい」
オフィス移転にかかる費用は、一般的に「1坪あたり20万〜40万円」が相場とされています。
オフィス移転の費用には、主に以下の項目が含まれるからです。
- 賃貸契約時に必要となる敷金(通常は賃料の6〜12ヶ月分)
- 仲介手数料(賃料の1ヶ月分)
- 内装工事費、原状回復工事費など
選ぶオフィスによっては、スケルトン物件で内装をゼロから設計するケースもあれば、居抜き物件で工事費用を抑えることもできます。
オフィス移転にはまとまった支出が発生するため、初期費用の内訳をしっかり検討し、無駄を抑えた計画が重要です。
本記事ではオフィスの移転にかかる費用の内訳や相場に加え、コストを抑える具体的な方法や会計処理の勘定項目まで解説します。
オフィス移転費用は「1坪あたり20万〜40万円」が一般的

オフィス移転にかかる費用の総額相場は「1坪あたり20万円~40万円程度」が一般的と言われています。
オフィス移転費用には、旧オフィスの原状回復費用から新オフィスの敷金、内装工事費、什器の購入費、そして引越し作業費まで、移転にまつわるほぼ全てのコストが含まれています。
以下では、オフィスのグレードやこだわりに応じた坪単価の目安を比較テーブルにまとめました。
| オフィスタイプ | 坪単価の目安 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| スタンダード | 20万〜25万円 | 既存の設備を活かし、必要最小限の内装・什器で構成。 |
| ハイグレード | 30万〜40万円 | エントランスや会議室にこだわり、デザイン性の高い空間。 |
| 居抜き・セットアップ | 5万〜15万円 | 内装が完成済み。工事費を大幅に抑えつつ即入居可能。 |
金額に幅がある理由は、物件のグレードや工事の自由度、「どのような状態で入居するか」によってコストが変動するからです。
たとえば、何もないスケルトン状態からこだわりの内装を作る場合と、前の入居者の設備が残る居抜き物件を利用する場合では、坪単価に2倍以上の差が出ることも珍しくありません。
まずは自社が目指すオフィスの水準を明確にし、坪単価30万円を一つの基準として予算を組み立てることから始めましょう。
坪単価を把握しておくことで、物件探しの段階で「そもそもこの広さは予算内に収まるのか」を正確に判断できるようになります。
オフィス移転にかかる費用の内訳

以下では、オフィス移転にかかる費用の内訳を解説します。
- 旧オフィスの退去費用
- 新オフィスの入居費用
- 内装工事・設備導入費用
- 引越し・インフラ構築費用
オフィス移転の費用は、大きく分けて旧オフィスの退去、新オフィスの契約、内装工事、そして引越し作業という4つのフェーズで構成されています。
移転総額をコントロールするためには、これらの各工程で「何にいくらかかるのか」という内訳を事前に詳しく把握しておくことが欠かせません。
まずは移転全体の工程を俯瞰し、それぞれのフェーズで発生するコストの特性を理解することから始めましょう。
以下では、具体的にどのような費用が発生するのか、フェーズごとに詳しく解説していきます。
1.旧オフィスの退去費用
旧オフィスの退去時に発生する主な費用は、入居時の状態に戻すための原状回復費用と、不要になった什器などの廃棄物処理費用です。
オフィス物件の多くは「完全原状回復」が義務付けられており、家庭用の賃貸物件よりも修繕範囲が広く、高額になりやすい傾向にあります。
たとえば、床のタイルカーペットの張り替えや壁紙の塗装、さらにはパーテーションの撤去跡の補修などが具体的な項目として挙げられます。
小規模なオフィスであっても、坪単価にして3万円から5万円程度の原状回復費を見込んでおくのが一般的です。
退去直前になって慌てないよう、あらかじめ入居時の契約書を確認し、原状回復の範囲と指定業者の有無を早めにチェックしておきましょう。
2.新オフィスの入居費用
新オフィスの契約に際しては、敷金(保証金)や仲介手数料、前家賃などの初期費用として、月額賃料の数ヶ月分から1年分程度のまとまった資金が必要です。
特に敷金は、物件によっては賃料の6ヶ月から12ヶ月分と非常に高額に設定されることが多いため、移転予算の中で最も大きなキャッシュアウトとなる場合があります。
具体例を挙げると、賃料50万円の物件を借りる際、敷金が12ヶ月分であれば600万円の支払いが発生する計算になります。
こうした契約金は、交渉によって分割支払いや保証会社の利用による減額ができる可能性もあるため、検討の余地があります。
物件選定の際は、賃料だけでなく「初期費用として総額でいくら手元から出ていくのか」をシミュレーションした上で判断しましょう。
3.内装工事・設備導入費用
内装工事・設備導入費用は、オフィスの利便性やデザイン性を左右する重要な項目であり、移転費用全体の中で最も変動幅が大きい部分です。
内装工事・設備導入費用には、主に以下が含まれます。
- 会議室や役員室などの間仕切り工事
- 照明の増設
- 空調設備の調整
- 新規で購入するオフィス家具の費用
特に注意が必要なのは、ビル側が業者を指定するB工事と、借主が自由に業者を選べるC工事の区分を明確に分けて管理することです。
例えば、空調や消防設備などの建物全体に関わる工事はB工事となり、見積もりが高止まりしやすいため、精査には専門的な知識が求められます。
内装のデザイン性を追求しつつも、まずは業務に必要なインフラ設備を優先し、コストパフォーマンスの高い業者選定を行いましょう。
4.引越し・インフラ構築費用
引越し・インフラ構築費用は、業務を停止させることなく新しいオフィスでスムーズに始動するために必要不可欠なコストです。
費用には、荷物の運搬費だけでなく、電話回線の移設、LAN配線、サーバーの設置、さらには複合機の搬入・設定費用などが含まれます。
たとえば、土日や夜間の作業を指定すると割増料金が発生したり、エレベーターの養生作業が厳格なビルでは人件費が膨らんだりする傾向にあります。
具体的な項目とその目安を以下の表にまとめました。
| 項目 | 費用の目安(1人あたり) | 内容 |
|---|---|---|
| 引越し運搬費 | 2万〜5万円 | 梱包・運搬・養生・什器の解体組み立て。 |
| IT・ネットワーク | 3万〜7万円 | LAN配線・サーバー移設・電話工事・設定。 |
まずは現状のIT環境をリストアップし、回線工事などの「予約が埋まりやすい項目」から優先的にスケジュールを確保するようにしましょう。
事前に業者と細かく打ち合わせを行うことで、当日の作業トラブルによる追加費用の発生を最小限に抑えることができます。
オフィス移転費用を抑える7つのコツ

以下では、オフィス移転費用を抑える7つのコツを解説します。
詳しく解説しますので、少しでもオフィス移転費用を抑えるために役立ててください。
敷金・礼金が格安の物件を選ぶ
オフィス移転の費用を抑えるために、敷金・礼金が格安の物件を選びましょう。
一般的なオフィス物件では、敷金は賃料の6~12か月分、礼金は1~2か月分が相場ですが、最近では敷金・礼金を抑えた物件も増えてきています。
特に、フリーレント付きの物件や保証会社利用が前提の物件では、敷金が大幅に削減されることがあります。
また、リモートワークが普及した影響で、賃料の安いエリアや築年数の古い物件でも需要が下がり、貸主が条件を緩和しているケースも少なくありません。
オフィス移転の際は、世情も鑑みて積極的に物件を探し、初期費用を抑えることが賢明です。
居抜き物件やセットアップオフィスを選ぶ
オフィス移転のコストを抑える方法のひとつとして、居抜き物件やセットアップオフィスを選ぶことが挙げられます。
通常のオフィスに比べて内装工事や設備投資の費用を大幅に削減できるので、以下の特徴とメリットを参考にしてください。
| 物件の種類 | 特徴 | 費用削減メリット |
|---|---|---|
| 居抜き物件 | 前テナントの内装・設備を引き継げる | 内装・設備工事が不要または最小限 |
| セットアップオフィス | すでに内装・家具・設備が整っている | 初期費用が抑えられ、すぐに業務開始可能 |
居抜き物件は、内装や什器をそのまま使用できるため、工事費や什器購入費が削減できるでしょう。
一方、セットアップオフィスは、デスクや設備が整っているため、すぐに業務に取り掛かることができます。
どちらも通常のオフィス移転に比べて、初期コストを大幅に抑えられるため、移転費用よりも事業にお金をかけたい企業から選ばれています。
フリーレントを交渉し均し賃料で支払う
オフィス移転の際、初期費用を抑えるために「フリーレント(賃料無料期間)」を交渉するのは有効な手段です。
フリーレントとは、契約開始から一定期間、賃料が発生しない制度で、貸主がテナント誘致のために設定することがあります。
特に、空室が多いビルや長期契約を結ぶ場合、交渉しやすい傾向にあります。
また、フリーレント期間終了後の賃料負担を平準化するために、「均し賃料(ならしちんりょう)」を選択することも可能です。
均し賃料とは、契約期間全体の総賃料を均等に分配し、毎月の負担を一定にする方法です。
以下に、月額賃料50万円の場合のフリーレントと均し賃料の具体例を示します。
| 項目 | フリーレントなし | フリーレント3か月 | 均し賃料適用時 |
|---|---|---|---|
| 契約期間(24か月) | 24か月 | 24か月 | 24か月 |
| フリーレント期間 | なし | 3か月 | 3か月 |
| 実質支払い総額 | 1,200万円 | 1,050万円 | 1,050万円 |
| 毎月の支払額 | 50万円 | フリーレント終了後50万円 | 46万円 |
フリーレントを活用し、均し賃料で支払うことで、初期費用を軽減しながら安定したキャッシュフローを維持することができるので、移転時にはぜひ交渉を検討してみましょう。
オフィスが小規模なら引越し業者を使わない
オフィス移転の際、引越し業者を利用すると、作業がスムーズに進む一方で大きなコストがかかります。
小規模オフィスで荷物が少ない場合は、業者を使わずに自社の従業員で対応することで、費用を大幅に抑えられます。
まず、移転計画をしっかり立て、社員に役割を分担することで効率的に作業を進められます。
デスクや椅子などの大型家具はリース品を利用する、または新しいオフィスで購入することで、運搬コストを削減できます。
書類や備品は事前に整理し、不用品を処分することで運搬量を減らせば、移動の負担も軽減できます。
また、カーシェアリングやレンタカーを活用すれば、トラックの手配費用も最小限に抑えられます。
レンタルオフィスやシェアオフィスを利用する
オフィス移転費用を抑えるために、レンタルオフィスやシェアオフィスを利用するのも一つの方法です。
レンタルオフィスは、デスクや椅子、インターネット環境、会議室などが完備されており、すぐに業務を開始できます。
シェアオフィスは、他の企業やフリーランスと共用するため、コストを抑えながら必要なスペースを確保できます。
初期投資を抑えたいスタートアップ企業や小規模事業者に人気です。
以下に、一般的な賃貸オフィスとレンタルオフィスの費用を比較します。
| 項目 | 一般的な賃貸オフィス | レンタルオフィス・シェアオフィス |
|---|---|---|
| 敷金・保証金 | 家賃の6~12か月分 | なし~1か月分 |
| 内装工事費 | 数百万円 | なし |
| 家具・設備費 | 数十万円~ | なし(完備) |
| 月額賃料 | 50万円~ | 10万円~ |
| 契約期間 | 2年以上が一般的 | 1か月~柔軟に対応 |
特に短期間の利用や、事業拡大を見据えた柔軟な働き方を求める企業にとって、レンタルオフィスやシェアオフィスはおすすめできます。
事務所移転の費用をシミュレーションする
オフィス移転の費用を抑えるためには、事前に事務所移転の費用をシミュレーションを行いましょう。
移転にかかる総費用を把握し、不要な出費を削減することで、予算を効率的に管理できます。
以下のように、移転に必要な主な費用をリストアップします。
- 敷金・礼金、仲介手数料
- 内装工事費
- 引越し費用
- 通信設備の導入コスト
- 什器・備品の購入費
- 業務の停止による一時的な売上減少
- 社員の通勤費の変動
事前にシミュレーションを行うことで、どこでコストを削減できるのか明確になり、無駄な支出を防ぐことができます。
補助金制度を活用する
自治体や国が実施している補助金・助成金制度を活用することで、移転費用の一部を公的資金で賄える可能性があります。
特に「テレワーク導入」や「働き方改革」「地域経済の活性化」を目的とした移転であれば、IT設備の導入費やオフィス改修費の一部が補助対象となるケースがあるためです。
具体例としては、東京都の「サテライトオフィス設置による職住近接推進事業」や、地方自治体が独自の企業誘致策として提供している「賃料補助」などが挙げられます。
代表的な補助金は、以下の通りです。
| 制度名 | 主な対象項目 |
|---|---|
| ものづくり補助金 | 新しい設備の購入・導入費 関連するシステム構築費 設備の運搬費や設置費用 |
| 事業承継・引継ぎ補助金 | オフィスの賃借料 設備導入費 謝金 マーケティング調査費 |
| IT導入補助金 | 会計ソフトや受発注ソフト 在庫管理システム ネットワーク監視システム IT導入にかかる初期設定や研修費用 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 新店舗・新オフィスでの改装 新しい商品の改良・開発 Webサイトの刷新や展示会出展 |
| 事業再構築補助金 | 建物の改修・増築にかかる費用 事業再構築にともなう一時的な移転費用(賃借料・引越費用) |
補助金制度は申請期限が設けられており、採択されるには事前の事業計画書が必須となるため、移転の半年前には情報収集を終えておく必要があります。
自社が所在する自治体や、移転先予定地の「企業支援ページ」を必ずチェックし、利用可能な制度がないか専門家や商工会議所に相談してみることを強くおすすめします。
オフィス移転時の「隠れたコスト」と注意点

以下では、オフィス移転時の「隠れたコスト」と注意点を解説します。
- IT・セキュリティ対策費用
- 火災保険料や什器の耐震補強などの諸経費
- 移転後の住所変更登記や印刷物の差し替え費用
オフィス移転を計画する際、物件の契約金や内装工事費などの目に見える大きなコストだけでなく、後からじわじわと響いてくる隠れたコストに細心の注意を払う必要があります。
なぜなら、これらの諸経費は一つひとつは数万円単位であっても、積み重なると全体の予算を10パーセントから20パーセント程度も押し上げる要因になりかねないからです。
実は、多くの担当者が移転直前になって予算不足に気づく原因の多くは、こうした細かな事務手続きや安全対策費用の見積もり漏れにあります。
まずは移転に伴う細かな支出をリストアップし、総予算の1割程度を不測の事態に備えたバッファとして確保しておくことから始めましょう。
IT・セキュリティ対策費用
新しいオフィスでの業務を安全かつ快適に開始するためには、最新のITインフラとセキュリティ体制の構築に相応の費用を投じる必要があります。
単にPCを運ぶだけではなく、以下の設定や費用が必要です。
- Wi-Fiの電波強度測定
- 入退室管理システムの設置
- ネットワークセキュリティの再設定
具体例を挙げると、社員証と連動したスマートロックの導入や、オフィスの死角をなくすための防犯カメラの設置には、機器代に加えて専門業者による施工費が数十万円単位で発生します。
これらの対策を怠ると、移転後の情報漏えいリスクが高まるだけでなく、後から追加工事を行う際に余計な人件費や配線工事費がかさんでしまいます。
内装デザインを決めるのと並行して、情シス部門や外部のITベンダーと協議を行い、移転初日から安全に働ける環境づくりを優先的に進めましょう。
火災保険料や什器の耐震補強などの諸経費
新オフィスへの入居にあたっては、ビルの管理規約に基づく火災保険への加入や、従業員の安全を守るための什器の耐震補強費用を忘れてはいけません。
旧オフィスで使用していた保険がそのまま引き継げないケースが多く、また地震大国である日本では、高い書庫やキャビネットを床や壁に固定することが法的な安全配慮義務としても求められるからです。
たとえば、重量のある棚をアンカーで固定する作業は専門の職人が行う必要があり、オフィス全体の什器を網羅すると数万円から十数万円のコストが必要になります。
安全対策費を削ってしまうと、万が一の災害時に大きな被害を招くだけでなく、オーナーから現状回復の際に厳しい指摘を受けるリスクも伴います。
物件契約時に火災保険の見積もりを早めに取り、同時に什器の固定作業も引越し業者のオプションとして一括で依頼できるよう交渉を進めておきましょう。
移転後の住所変更登記や印刷物の差し替え費用
オフィスを移転すると、登記簿上の住所変更手続きや、会社の看板、名刺、パンフレットといったあらゆる印刷物の差し替えに多額の費用が発生します。
法務局への本店移転登記には登録免許税が必要であり、さらに司法書士への報酬も含めると、移転先が同一管轄内か否かによって3万円から6万円以上の実費がかかるためです。
また、従業員全員分の名刺を新住所に刷り直したり、Webサイトの会社概要や封筒、請求書のフォーマットを全て更新したりする作業も無視できない負担となります。
具体的には、在庫として残っている旧住所のパンフレットや封筒を全て破棄しなければならず、廃棄コストと新規制作コストが同時に発生するという点に注意が必要です。
移転の数ヶ月前から印刷物の在庫調整を行い、住所変更登記は移転後2週間以内の期限があることを念頭に、必要な手続きリストを早急に作成しましょう。
オフィス移転費用の会計処理|勘定項目の仕分け例

オフィス移転にともなって発生する多様な費用は、性質に応じて適切な勘定科目で会計処理を行う必要があります。
代表的な費用と対応する勘定科目をまとめました。
- 運搬・移送費(引越し費用)
- 修繕費(原状回復費用)
- 固定資産除去損(廃棄料)
- 資産(敷金・礼金)
- 支払い手数料(仲介手数料)
- 固定資産(内装工事費・設備費)
- 消耗品費(備品)
順番に解説します。
1. 運搬・移送費(引越し費用)
オフィス移転時に引越し業者へ支払う費用は、会計処理上「雑費」として処理されるのが一般的です 。
ただし、企業によっては以下のような勘定科目を使用するケースもあります。
- 支払手数料
- 荷造発送費
- 荷造運賃
どの勘定科目を用いるかは企業の会計方針によって異なりますが、一度選択した勘定科目は原則として継続して使用する必要があります。
社内の管理会計の精度を高めるには、実態に合った勘定科目の選定が重要です。
ただし、細かく分類しすぎると前回使った科目を都度確認する手間が増え、会計処理が煩雑になる恐れもあるでしょう。
勘定科目の設定は実務の効率と管理のしやすさを考慮して、長期的な視点で判断しましょう。
2. 修繕費(原状回復費用)
旧オフィスの退去時にかかる原状回復費用は、通常「修繕費」として会計処理されます。
原状回復工事はオフィスを入居時の状態に戻すための工事で、多くの場合は原状回復費用は預けていた敷金から差し引かれます。
敷金で足りなければ不足分を追加で支払い、余れば差額が返金される仕組みです。
原則、修繕費として費用計上するものの工事の内容によっては例外もあり、建物の価値を大きく高めるような工事であれば、資産計上し減価償却の対象となるケースも考えられます。
減価償却とは
減価償却とは・・・高額な資産の価値を、複数年に分けて費用として計上する会計処理です。一度に多額の費用を計上せず、利益の変動を抑えられるメリットがあります。
また、原状回復費用が高額で、かつ移転にともなって一時的に発生した費用である場合には「特別損失」として計上も可能です。
3. 固定資産除却損(廃棄料)
オフィス移転で不要になった什器や家具などの固定資産を廃棄する場合は、帳簿上の残存価額と処分にかかる費用をあわせて「固定資産除却損」として会計処理する必要があります。
たとえ減価償却が終わっていても、帳簿上に残っている資産があると存在しない資産が計上されたままとなり、財務諸表の正確性を損なう恐れがあります。
なお、廃棄は資産の譲渡にあたらないため、消費税は不課税です。
少額であれば「雑損失」で処理されるケースもありますが、固定資産の除却には廃棄証明書の取得・保管が必要です。
証明書が取れない場合でも、廃棄の事実を証明できる書類(写真・領収書)を残しておくと安心でしょう。
4. 資産(敷金・礼金)
オフィスの賃貸契約時に支払う敷金と礼金は、性質が異なるため会計処理も変わってきます。
| 項目 | 性質 | 会計処理 | 勘定科目 |
|---|---|---|---|
| 敷金 | 預け金(原則として返還される) | 資産として計上 | 差入保証金・敷金 |
| 礼金 | 賃貸人への謝礼金(返還されない) | 費用処理または資産計上(繰延) | 地代家賃・長期前払費用 |
敷金は、契約によっては一部が返還されないケースもあります。
返還されない金額が20万円未満であれば「支払手数料」などの費用科目で処理可能です。
20万円以上の場合は「長期前払費用」または「権利金」として資産計上して、契約期間で償却します。
一方、礼金は返還されないため20万円未満なら「地代家賃」で処理して、20万円以上なら「長期前払費用」として契約期間で均等に償却します。
敷金と礼金は契約金の性質や金額によって処理が大きく異なるため、適切な科目と処理方法を選ぶことが大切です。
5. 支払い手数料(仲介手数料)
新オフィスの賃貸契約で不動産会社に支払う仲介手数料は「支払手数料」として処理するのが一般的です。
仲介手数料は消費税の課税対象となるため、仕訳では税額も含めて処理します。
不動産を購入した場合は仲介手数料を物件の取得原価に含めて資産計上し、建物とあわせて減価償却します。
一方、賃貸契約では支出時にそのまま費用として処理するのが原則かつ、金額が大きい場合は「前払費用」として資産計上し数年で償却する方法が一般的です。
ただし、仲介手数料は一時的かつ少額であることが多いため、オフィス賃貸では前払費用として処理するケースは少ないでしょう。
6. 固定資産(内装工事費・設備費)
新オフィスで行う内装工事や造作家具などの設備・高額な什器備品は「固定資産」として資産計上を行い、耐用年数に応じて減価償却で費用化する必要があります。
内装や設備によって会計上の区分や処理方法が異なるため、以下を参考にしてください。
| 項目 | 処理区分 | 処理方法 |
|---|---|---|
| 壁や床の仕上げ | 建物 | 固定資産として資産計上して減価償却 |
| 電気・空調・給排水設備 | 建物付属設備 | 固定資産として資産計上して減価償却(耐用年数は建物より短い) |
| 後付けしたエアコン・家具 | 工事器具備品 | 固定資産として資産計上して減価償却(耐用年数は建物より短い) |
| 設計費・工事管理費 | 「建物」や「建物附属設備」に按分して計上する | 工事費に含めて資産取得価額に含める |
なお、1点あたりの取得価額が10万円未満の備品は「消耗品費」として購入時に全額費用処理が可能です。
また、中小企業者等には、30万円未満の減価償却資産を年間300万円まで即時償却できる「少額減価償却資産の特例」も認められています。
7. 消耗品費(備品)
オフィスで使う比較的安価な備品は、基本的に「消耗品費」として処理します。
使用期間が短かったり取得価額が少額だったりするため、購入ごとに費用として処理するのが合理的です。
- 文房具・コピー用紙・トナーカートリッジ・清掃用品などの事務用品や日用品
- 取得価額が10万円未満の什器備品(安価な椅子・棚・小型の電卓など)
- 使用可能期間が1年未満の備品
上記の備品は、原則として購入時に全額を費用として計上します。
ただし、期末に未使用の備品が残っている場合には「消耗品」として資産計上し、翌期に使用した分を費用処理する方法もあります。
中小企業には「少額減価償却資産の特例」があり、30万円未満の備品であれば年間300万円まで即時に費用処理が可能です。
本来は資産計上すべき備品でも購入時に一括で経費にできるため、利益を圧縮して税金を抑える効果が期待できます。
オフィス移転にともなう従業員の引越し費用処理

企業がオフィス移転を行い従業員に転居をともなう異動を命じた場合、会社が引越し費用を負担することがあります。
引越し費用は、条件を満たせば従業員の給与として課税されず、非課税として扱われます。
- 業務命令による転居であること
- 実費支給で社会通念上妥当な金額であること
対象となる費用は引越し業者への支払いや従業員本人や家族の交通費で、会計処理上は「福利厚生費」として経費処理します。
なお、一律支給などで実費を超える部分は、給与として課税対象になる場合があるため注意が必要です。
引越し費用の範囲や上限は、社宅規程や転勤規程に明記しておくとトラブル防止につながるでしょう。
オフィス移転費用を節約するならオフィスバンクがおすすめ

オフィス移転費用を節約するなら「オフィスバンク」がおすすめです。
オフィスバンク株式会社は、名古屋・東京のオフィス賃貸を仲介している創立30年の不動産会社です。
移転コストの削減を得意としており、敷金・礼金が抑えられた優良物件の紹介はもちろん、内装工事や原状回復なども含めた一括対応が可能です。
通常は別々の業者に依頼することが多い内装や設備の手配も、オフィスバンクなら窓口を一本化できるため、時間とコストの無駄を大幅に削減できます。
「物件探しだけでなく、移転にかかわるすべてをまとめて相談したい」という企業様にとって、オフィスバンクは最適なパートナーです。
無駄な費用を抑えつつ、スムーズで満足度の高いオフィス移転を実現します。
オフィス移転の費用にまつわる質問集
オフィス移転費用にまつわる質問を紹介します。
- 原状回復費用は3年でいくらかかる?
- 工場移転費用の相場は?
- オフィス移転コンサルにかかる費用は?
オフィス移転にかかる費用について少しでも疑問を解消し、理想のオフィス実現に向けて動き出しましょう。
原状回復費用は3年でいくらかかる?
オフィスを賃貸する際、契約終了時に求められる「原状回復費用」は、移転時の大きな出費の一つです。
契約期間が長くなるほど劣化が進み、費用が高額になりやすいのが特徴です。
以下に、契約年数ごとの原状回復費用の目安を示します(オフィス面積50㎡・一般的な使用状況を想定)。
| 契約年数 | 原状回復費用の目安(面積50㎡) |
|---|---|
| 3年 | 50万~100万円 |
| 5年 | 80万~150万円 |
| 7年 | 120万~200万円 |
| 10年 | 150万~300万円 |
一般的に、短期間の利用であれば原状回復費用は抑えられますが、長期間使用するほど床材やクロスの劣化が進み、修繕範囲が広がるため、費用が増加します。
また、飲食店や工場のように汚れや損傷が発生しやすい業種では、さらに高額になる場合があります。
ビルによっては経年劣化を考慮してくれたり、特約で免除されるケースがありますので、管理会社に問い合わせてみましょう。
工場移転費用の相場は?
工場移転には、一般的に「1,000万円〜数億円規模」の費用が発生します。
敷地面積・機械設備の規模・移転距離などによって大きく変動しますが、以下は中小規模の製造業が国内移転(100〜300坪程度)を行う際の代表的な費用項目と相場感です。
| 費用項目 | 相場目安(税込) |
|---|---|
| 物件取得費(賃貸/購入) | 賃料の6〜12ヶ月分+諸費用 |
| 敷金・礼金・仲介手数料 | 数百万円〜数千万円 |
| 建物・設備の改修工事 | 数百万円〜1億円超 |
| 内装・インフラ工事 | 500万〜3,000万円 |
| 機械移設・据付費 | 数百万円〜数千万円 |
| 輸送費 | 100万〜500万円程度 |
| 原状回復費(旧工場) | 2万〜5万円/1坪 |
| その他雑費 | 数十万〜数百万円 |
特に注意すべきは、機械移設の技術的コストや原状回復義務です。専門技術が必要な工程が多いため、外注先の選定や相見積もりが重要となります。
また、工場の稼働停止期間による売上ロスも間接的なコストとして考慮すべきです。
オフィス移転コンサルにかかる費用は?
オフィス移転コンサルにかかる費用は、定額報酬型で50万円~300万円程度が相場で、成功報酬型では、移転コストの削減額や契約賃料の一定割合(5%~15%程度)が報酬として設定されることが多いです。
オフィス移転コンサルを利用すると、物件選定、コスト削減、スケジュール管理、業者選定、内装デザインなどの総合的なサポートが受けられるため、業務の負担を軽減できます。
また、内装設計や引越し手配まで依頼すると、さらに追加費用が発生します。
オフィス移転コンサルを利用する場合は、事前に見積もりを取り、自社のニーズに合ったプランを選ぶようにしましょう。
オフィス移転の費用を抑えるなら情報収集しよう
本記事では、オフィス移転にかかる費用の内訳や相場に加え、コストを抑える具体的な方法や会計処理の勘定項目まで解説しました。
オフィスの移転は多くの費用と手間がかかりますが、事前に情報を整理して計画的に進めることで、コストを抑えつつスムーズな移行が可能です。
初期費用や会計処理・税務対応を理解しておくと、無駄な出費を避けられます。
また、補助金の対象となる費用や申請の流れを把握して制度を上手に活用することも、無駄な出費を抑える有効な手段です。
本記事を参考に、自社に最適な移転計画を立て、移転を企業成長のきっかけとしてください。


