「オフィス移転の手続きは?」
「事務所移転の手順は?」
オフィスの移転には、各機関への届出や登記の申請、オフィス工事の手配など多くの手続きが必要です。
特に、本店移転登記の提出や税務署への届出は、期限を守らないと罰則を受けるおそれがあります。
また、移転先の住所によっては法務局の管轄が変わるため、登記手続きの流れも異なる場合があります。
本記事では、事務所移転の手続きを詳しく説明しますので、ぜひ参考にしてください。
事務所移転で必要な手続きと手順

事務所移転で必要な手続きと手順は、以下の通りです。
- オフィスを解約する
- インターネットや電話回線の移転手続き
- 銀行口座とクレジットカードの登録情報を変更する
- 火災保険・損害保険の変更手続き
- オフィス移転に関する社内資料の作成
- 取引先など社外に周知する
- 郵便物に関する手続き
事務所の移転は、企業にとって大きな節目となるイベントですが、移転に伴う手続きや契約変更を行わないと、業務に支障をきたす可能性もあります。
手順を追って解説しますので、参考にしてください。
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1.オフィスを解約する
事務所の移転の手続きで初めにすべきことは、現在のオフィスの解約です。
特に、解約通知の期限を守らないと違約金が発生する可能性があるため、事前に把握しておきましょう。
以下の表に、オフィス解約時に必要な手続きをまとめました。
手続き項目 | 内容 |
---|---|
賃貸契約の確認 | 契約書を確認し、解約通知期限や原状回復義務をチェックする |
解約通知の提出 | オーナーや管理会社へ書面で解約通知を提出する |
原状回復工事 | 退去時に必要な修繕やクリーニングを手配する |
敷金の精算 | 敷金の返還額や精算条件を確認する |
また、トラブルを未然に防ぐためにも、オーナーや管理会社とのやり取りは口頭だけでなく書面で行い、解約通知や敷金の精算などを円滑に進めましょう。
2.インターネットや電話回線の移転手続き
オフィスの移転に伴い、インターネット回線や電話回線の移転手続きも必要です。
まず、現在契約しているプロバイダーや電話会社に移転の連絡を行い、新オフィスでの回線工事が必要かどうかを確認しましょう。
ビルによっては特定の事業者や機器しか使えないこともあるので、注意が必要です。
特に光回線や専用回線を利用している場合、工事完了までに時間がかかることがあるため、移転の1~2か月前には手続きを開始するのが理想です。
また、電話番号を変更する場合は、取引先や顧客への周知も忘れずに行いましょう。
3.銀行口座とクレジットカードの登録情報を変更する
事務所移転の手続きで忘れがちなのが、銀行口座とクレジットカードの登録情報の変更です。
住所変更を行わないと、銀行からの重要な書類やクレジットカードの明細書が旧住所に届いてしまい、情報漏洩のリスクが生じます。
銀行口座の住所変更は、取引銀行の窓口やインターネットバンキングから手続きが可能です。
ただし、法人の場合は必要書類の提出を求められることがあるため、事前に確認しておきましょう。
クレジットカードの登録情報変更は、カード会社の公式サイトや電話で手続きできます。
公共料金やサブスクリプションサービスの支払いに使用している場合は、契約情報も忘れずに更新しましょう。
4.火災保険・損害保険の変更手続き
事務所を移転する際には、必要に応じて火災保険や損害保険の契約内容の変更手続きを行いましょう。
移転後の事務所に適用されていない保険のままだと、万が一のトラブル時に補償を受けられない可能性があります。
以下の表に、注意点をまとめました。
項目 | 手続き内容 | 注意点 |
---|---|---|
火災保険の変更 | 保険会社に住所変更を申請し、補償内容を確認 | 建物の構造や広さにより保険料が変わる場合あり |
損害保険の変更 | 移転先の設備・リスクに応じて契約を見直す | 事業内容によって補償内容が変わることも |
特に、火災保険は建物の構造や所在地によって保険料が変動するため、契約内容の見直しが不可欠です。
また、損害保険についても、新しい事務所の環境やリスクに合わせて補償内容を再検討することをおすすめします。
5.オフィス移転に関する社内資料の作成
オフィス移転に伴い、社内向けの資料を作成することで、従業員がスムーズに移転準備を進められます。
まず、荷造りの日や引っ越しの日のスケジュールを明確にし、各部署の役割や担当者を記載したガイドラインを作成しましょう。
移転当日の流れや、荷物の梱包ルールなども具体的に示すことで、混乱を防げます。
また、新オフィスの住所やレイアウト図、利用可能な設備情報なども共有し、従業員が事前に確認できるようにしておきましょう。
さらに、移転後の業務フローの変更点や、新たな社内ルールがある場合は、それらを詳しく説明したマニュアルを作成することが望ましいです。
6.取引先など社外に周知する
オフィス移転が決定したら、取引先や関係者に対して周知しましょう。
事前に連絡をしないと、郵便物が旧住所に届いたり、取引先とのやり取りに支障をきたす可能性があります。
まず、主要な取引先や顧客に対して、移転の案内を送付します。
案内文には、新オフィスの住所や電話番号、移転日、業務開始日などを明記し、移転後も円滑に連絡が取れるようにしてください。
特に、請求書の送付先変更が必要な場合は、早めに取引先に伝えておくべきです。
移転日直前や直後には、改めて重要な取引先へ確認の連絡を入れると、トラブルの防止につながります。
7.郵便物に関する手続き
オフィス移転時には、郵便物が確実に新住所へ届くように手続きを済ませましょう。
まず、日本郵便の「転送サービス」を利用し、旧住所宛の郵便物を新住所へ転送できるように申請します。
転送期間は1年間ですが、早めに手続きを済ませることで、移転後すぐに郵便物を受け取れます。
旧オフィスに郵便物が届いてしまうリスクを減らすため、一定期間は旧住所の管理を行い、誤って届いた郵便物の回収・処分もすべきです。
スムーズな移転のために、計画的に対応しましょう。
事務所移転で行う各機関への届出

事務所を移転する際には、関係する各機関への届出を忘れずに行う必要があります。
- 労働基準監督署への届出
- 法務局への届出
- 税務署・都道府県税事務所への届出
- 市区町村役場への届出
- ハローワークへの届出
- 警察署での手続き
- 消防署での手続き
上記の手続きを怠ると、法的なトラブルや業務の遅延につながる可能性があります。
特に、労務・税務・登記関連の届出は期限が定められている場合が多いため、計画的に進めましょう。
詳しく解説しますので、参考にしてください。
労働基準監督署への届出
事務所を移転した際、労働基準監督署には「労働保険名称・所在地変更届」を提出する必要があります。
従業員を雇用している場合は、労働基準法に基づき、新たな管轄の労働基準監督署へ速やかに届出を行わなければなりません。
労働保険名称・所在地変更届 | |
---|---|
提出先 | 新しい管轄の労働基準監督署 |
提出期限 | 速やかに |
必要書類 | 変更届(所定の様式) |
また、労働保険に加入している事業所は、労働保険の適用事業所の変更手続きも必要になります。
移転先の業務形態や労働環境に変更がある場合は、労働条件の変更届も求められることがあります。
法務局への届出
法人が事務所を移転する場合、「本店移転登記」を法務局へ申請する必要があります。
登記を怠ると、法人としての所在地情報が正しく登録されず、法的なトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。
本店移転登記 | |
---|---|
提出先 | 法務局 |
提出期限 | 移転後2週間以内 |
必要書類 | 登記申請書、定款、株主総会議事録 |
本店移転の登記は、移転前の法務局または移転後の法務局のどちらでも申請できます。
また、マイナンバーカードとICカードリーダライタがあればオンラインでも申請が可能です。
参考:株式会社の本店移転の登記をしたい方(オンライン申請)|法務局
税務署・都道府県税事務所への届出
事務所移転に伴い、税務署や都道府県税事務所にも届出を行う必要があります。
法人の場合、「異動届出書」を提出し、新しい所在地に関する情報を登録することが義務付けられています。
異動届出書 | |
---|---|
提出先 | 移転先の税務署 |
提出期限 | 速やかに |
必要書類 | 異動届出書(所定の様式) |
また、事業税に関する手続きも必要な場合があるため、都道府県税事務所への届出も忘れずに行いましょう。
市区町村役場への届出
事務所を移転する際には、市区町村役場へも届出が必要です。
以下に、市区町村役場での主な届出と必要書類について表にまとめました。
届出名 | 必要書類 | 提出期限 |
---|---|---|
法人の所在地変更届 | 登記事項証明書、定款の写し、届出書 | 移転後速やかに |
事業所の所在地変更届 (個人事業主) | 事業開始等申告書(変更届)、本人確認書類 | |
固定資産税 償却資産の異動届 | 償却資産申告書、事業用資産のリスト | |
住民税の事業所 所在地変更届 | 変更届、従業員の給与支払報告書(必要に応じて) |
当てはまる項目があれば、必要に応じて市町村役場で手続きしましょう。
ハローワークへの届出
事務所を移転した際、従業員を雇用している場合はハローワーク(公共職業安定所)への届出が必要です。
雇用保険の適用事業所として登録されている住所を変更するための手続きであり、怠ると雇用保険に関する手続きが滞る可能性があります。
以下に、ハローワークでの主な届出と必要書類についてまとめます。
届出名 | 必要書類 | 提出期限 |
---|---|---|
雇用保険事業主 事業所変更届 | 変更届、事業主の印鑑、登記事項証明書(法人の場合) | 移転後10日以内 |
労働保険名称 所在地等変更届 | 変更届、労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(必要に応じて) | 変更後速やかに |
届出を速やかに行うことで、雇用保険の適用や労働者の権利が保護されます。
移転後は新旧のハローワークに確認しながら手続きを進めましょう。
オンラインで申請書がダウンロードできるので、確認してみましょう。
警察署での手続き
警察署への届出は、車両を事業で使用している場合に必要となります。
会社名義の車両がある場合、新しい事務所の所在地を反映させるために車庫証明の変更手続きを行いましょう。
車庫証明(自動車保管場所証明書) | |
---|---|
提出先 | 管轄の警察署 |
提出期限 | 速やかに |
必要書類 | 申請書、使用承諾書など |
消防署での手続き
事務所の規模や業務内容によっては、消防署への届出が必要になります。
防火管理者の選任や消防設備の設置・点検が求められる場合があるため、速やかに手続きを進めましょう。
届出名 | 必要書類 | 提出期限 |
---|---|---|
防火管理者選任届 | 選任届、防火管理者資格証の写し、事業所の概要書類 | 選任後速やかに |
防火対象物使用開始 届出書 | 使用開始届、建物の平面図、消防用設備の配置図 | 使用開始の7日前まで |
消防用設備等設置届 | 設置届、設備の仕様書、建物の平面図 | 設置工事前 |
事務所移転の際の注意点3つ

事務所移転の際に気をつけたい注意点を3つ紹介します。
- 必要書類をチェックリストで確認する
- 原状回復工事などの退去費用を確認する
- 効率的なスケジュール計画を立てる
移転に伴う手続きの漏れや、業務の中断を最小限に抑えるために参考にしてください。
必要書類をチェックリストで確認する
事務所移転の際には、必要書類をチェックリストで確認するようにしましょう。
移転後に書類が不足していると、行政手続きが滞り、業務に支障をきたす場合があります。
以下に、主な書類をチェックリストでまとめました。
- 法人の登記事項証明書(法務局で取得)
- 定款の写し
- 賃貸契約書の写し(新事務所の契約内容確認用)
- 住所変更届(税務署・市区町村役場)
- 雇用保険事業所変更届(ハローワーク)
- 労働保険名称・所在地変更届(労働基準監督署)
- 防火管理者選任届(消防署)
- 固定資産税・償却資産の異動届(市区町村役場)
- 許認可関連の変更届(古物商・警備業など)
- 郵便物の転送届(郵便局)
事前に必要書類をリストアップし、各機関の受付期限を確認しておくことでトラブルを防げます。
原状回復工事などの退去費用を確認する
事務所移転の際には、新しいオフィスの準備に目が行きがちですが、退去時の「原状回復工事」などの退去費用もしっかり確認しておきましょう。
以下に、主な退去費用と内容をまとめました。
費用項目 | 内容 |
---|---|
原状回復工事費 | 事務所を契約時の状態に戻す工事費 |
解約予告違約金 | 解約通知を期限内に出さなかった場合の違約金 |
敷金・保証金の償却 | 敷金や保証金の一部が返還されないことがある |
クリーニング費用 | 清掃業者による室内の清掃費 |
原状回復費用 | エアコン・照明撤去、壁紙張替えなど |
上記の費用は、契約書の内容によって異なるため、移転前に貸主や管理会社と確認しましょう。
また、原状回復工事は複数の工事業者から見積もりを取ることで、コストを抑えられる場合もあります。
効率的なスケジュール計画を立てる
オフィス移転を成功させるためには、効率的なスケジュールを立てましょう。
スケジュールの目安は以下の通りです。
時期 | 主な作業内容 |
---|---|
6~3ヶ月前 | 移転の方針決定 移転先の選定 現オフィスの解約通知 新オフィスの契約手続き |
3~2ヶ月前 | 内装、レイアウトの計画 家具・設備の準備 通信回線、インターネット契約 引っ越し業者の選定 |
2~1ヶ月前 | 社内通知 取引先への案内 各種届出の準備(税務署・市区町村役場・ハローワーク・警察署など) |
2週間前 | 具体的な引っ越しスケジュールの確定 荷造りの開始 社内での役割分担決定 |
1週間前 | 郵便物転送手続き 電気・水道・ガスの契約変更 社員の業務調整 |
移転当日 | オフィス移転作業 設備の最終確認 トラブル対応 |
オフィス移転には余裕をもったスケジュールを立て、計画的に動きましょう。
オフィス移転の手続きに関する質問

オフィス移転の手続きに関する質問を紹介します。
- 事業所を移転したら36協定はどうなりますか?
- 本社移転登記は自分でできますか?
- 会社の移転手続きにかかる費用はいくらですか?
ささいな疑問を解消して、オフィス移転を成功させましょう。
事業所を移転したら36協定はどうなりますか?
36協定は事業所ごとに締結・届出を行うため、新しい事業所の所在地を管轄する労働基準監督署へ改めて36協定を届出る必要があります。
また、移転により労働条件や勤務形態が変わる場合は、36協定の内容自体も見直しが必要です。
例えば、移転により通勤時間が大幅に変わり、労働時間の実態が変わる場合、従業員の負担を考慮した協定内容に修正することが求められます。
加えて、移転に伴う人員の増減や業務内容の変化によって、時間外労働の必要性も変わる可能性があるため、労使間で十分に協議し、適切な協定を締結することが重要です。
なお、新しい36協定を締結する際には、従業員代表の選出が適正に行われているかも確認しましょう。
不適切な選出方法では、協定の有効性が問われることがあります。
本社移転登記は自分でできますか?
本社移転登記は自分で手続きすることができます。
まず、移転先が同じ管轄内か、異なる管轄かで手続きが異なります。
同じ管轄内なら比較的シンプルで、変更登記申請書と株主総会議事録(または取締役会議事録)などを準備し、法務局へ提出します。
一方、異なる管轄への移転は、旧管轄と新管轄の両方で登記申請が必要になるため、手続きがやや複雑です。
自分で行えば司法書士への報酬を節約できますが、書類作成や法務局とのやり取りに手間がかかるため、不安な場合は専門家に依頼するのも選択肢です。
会社の移転手続きにかかる費用はいくらですか?
会社の本店を移転する際には、法務局で登録免許税がかかります。
管轄内か管轄外かで費用が異なり、管轄内移転であれば30,000円、管轄外移転であれば60,000円の登録免許税がかかります。
以下の表に、主な移転手続きの費用をまとめました。
項目 | 費用(目安) |
---|---|
登録免許税(管轄内移転) | 30,000円 |
登録免許税(管轄外移転) | 60,000円 |
司法書士報酬(依頼時) | 30,000~100,000円 |
定款変更費用(必要な場合) | 数千円~ |
本店移転登記には期日があり、遅れると罰則を受ける場合があるので気をつけましょう。
オフィス移転するときは手続きを忘れずに

オフィス移転は、新しい環境で事業を成長させるチャンスですが、多くの手続きや費用が発生します。
本店移転登記や各種届出、賃貸契約、引っ越し準備などを計画的に進めることが重要です。
また、移転後の事務手続きを忘れると、法的なトラブルや業務の遅れにつながる可能性があるので、必要な手続きや書類をリストアップしておきましょう。
余裕を持ったスケジュールを組むことが、オフィス移転成功のカギとなります。